精神病院

精神科にかかっている人はたくさんいますが、入院が必要になる人は精神科を受診している人の中でも多数派ではないし、閉鎖病棟のお世話になる人は少なかろうと思います。ましてや措置入院で閉鎖病棟に直行となるとさらに少ないでしょう。

閉鎖病棟というと、鍵のついた檻があって始終わめき声が聞こえていてすっごい怖いところ、というイメージがあるかも知れません。そこはたしかにある意味怖くて、とっても不思議なところでした。

【追記】
相模原市の障がい者施設で起きた殺傷事件を受けて措置入院について少し追記しておきます。

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【Aさんと母親】

まず最初に言っておきますが、入院したのは私ではありません。

とある知人…Aさんとしておきましょう、かなり重いパニック障害があって家から出られない男性でしたが、私はひょんなことからこの人とこの人の母親と関わることになりました。この親子は顔を向かい合わせに癒着しているような共依存で、それがしんどいもんだから外部の私に親子そろって依存してきていました。

Aさんはパニック障害だけだったらまだ扱いよかったのですが、どうやら境界性人格障害もあったらしく、ささいなことでぶち切れて暴れ出したらもう手がつけられない困った人でした。ちょっとしたことでパニック発作を起こすのに、暴れてるときはなぜか発作を起こさないのでそれがすごい不思議でした。

今なら「勘弁してくださいっ!」とさっさと逃げ出せますが、当時は助けになるなら、みたいなくだらない使命感があったんですよ。無駄なことなのにね(苦笑)

【措置入院で閉鎖病棟にGO!】

ある時、「暴れていてどーにもならないから早く来て!」と母親から連絡があり、出向いてみるとAさんが包丁持って立ってました。母親は幸いケガなんかはなく、自室でため息ついてました。

私が家に来たことでほんの少し落ち着いたAさんはなんとか包丁をテーブルに置いてくれたのですが、何に怒り狂ってるのかよくわかんない。母親に聞いて見ると、数日前に起こした接触事故を思い出したら怒りが収まらなくなって、事故の相手のところに行ってカタをつけてやる!と暴れ出したとのこと。

で、母親から話を聞いている間にまた怒りがわいてきてわめき始めた。

まったく、間欠泉かっ!!

怒りのおさまらないAさんは「この家、燃やしたる!」と部屋の中に灯油をまきはじめ、手にしたライターは必死で奪取したけど家中のあちこちにライターが置かれている家だったのでとても奪取がおいつかず、私は外に出て警察を呼びました

私服の警官が3人駆けつけてくれたとき、Aさんはあらゆるものが投げ散らかされ灯油の匂いが立ち込める中で、目を血走らせてタバコを吸っておりました。絨毯には黒い焼け焦げ跡。テーブルには包丁。灯油の匂いと同じくらい立ち込める犯罪未遂臭。

はい、措置入院。

措置入院とは、精神障害が原因で自傷他害のおそれが著しい場合に、本人の意思とは関係なく行政命令で入院させることです。Aさんは覆面パトに乗せられて精神病院に連れて行かれました。

【初めての閉鎖病棟】

入院ってことになってやれやれと思い私は帰ろうとしたのですが、一人では抱えきれない母親に懇願されて私も病院に行くことになりました。着替えなんか持って来てないから灯油かぶったままでですよ。そのときは非常事態だったから気がつかなかったけど、灯油の匂いを振りまいてる私たちも相当アブナイ人のようだったことでしょう。

閉鎖病棟ってものがどういう雰囲気なのか、それまで全然イメージがわかなかったのですが、病棟の入り口で「あ、これが閉鎖病棟かぁ」と思いました。

ガラス扉を開けるともう一つ鍵のかかった扉があって、開閉に必ず鍵が必要なのです。

入ると小さなホールみたいな作りでした。壁に沿ってソファがいくつかと喫煙コーナー。すべての病室はホールに面していて、ドアはパステルカラーに塗られています。夜だったせいか誰もいなくて、Aさんのわめき声だけがどこかから聞こえていました。

「今日は興奮が強いようですので、こちらの措置室に入ってもらいます」と看護師さんから説明があり、そこにどこかの部屋にいたAさんが連れてこられ、「措置室」と書かれた重たいドアが開けられると ちらりと見えたおお、これが措置室か。ここって保護室とも言うよな。

そのときAさんが私の腕をつかんで「お前も一緒に入ろ」と言ったのですが冗談ではありません。

その病院の措置室は、チマタで聞くような鉄格子ではなく強化ガラス張りでした。博物館の展示を連想しました。

薄暗い灯りの下、床に直接布団が敷かれていて、その横にはフタのないトイレがぽかーっと口を開けている。トイレのフタがないのは、無理やり外してガラスを割ろうとする猛者がいるからだとか。

同じようなつくり(であろう)部屋が「措置室」と書かれた重たいドアの向こうにいくつか並んでいて、「あー」とか「うおー」と、うなり声が聞こえていました。

いかに措置入院が必要な狂乱状態とはいえ、こんなところに入れられるのかと思ったらちょっと哀れな気がしました。Aさんの母親はあまりに可哀想だとさめざめと泣いてました。

入院させてやれやれと思ったのですが…
私はAさんと母親に懇願されて1日おきに見舞いに通うことになってしまいました。あんなに頻繁に閉鎖病棟を訪ねることになろうとは…

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【個室は明るいけど…】

翌日、Aさんは個室に移されました。ドアは内からは開けられず、鉄格子。天井に監視カメラが設置されています。パステルカラーのドアには前住者たちが力任せにつけたであろう蹴った跡がたーくさん。ベッドのある部屋に入れたのは、興奮状態で暴れはするけど自傷自殺の恐れがないからみたい。

内科や外科であれば入院着やパジャマ着用なんでしょうが、ここではみんな私服です。ただ、携帯は没収、タバコは本数を決められ病室では吸えず、看護師さんに許可をもらって喫煙コーナーに出なくちゃならない。トイレもついてないから、これまた看護師さんを呼ばなきゃいけない。窮屈な環境です。

彼氏や彼女が閉鎖病棟の個室に入ってて時々見舞ってますという方、病室でいちゃいちゃしてると見られてるかも知れませんよ(笑)

個室に移って気がつきましたが、閉鎖病棟の看護師さんは若くて屈強なメンズが多かったです。
Aさんが入った閉鎖病棟は男女で棟が違いましたし、この病棟には高齢者が少なかったので、誰かが暴れ出したらがーっと押さえ込める力持ちが揃ってる感じでした。

【措置入院から一般入院へ】

-追記-

Aさんが覆面パトに乗せられて閉鎖病棟につれてこられて1週間くらい経った頃でしょうか、看護師さんから「明日は大事な面談がある」と言われました。措置入院を解くかどうかの面談です。

2名以上の医師が立ち会って退院させてもいいかどうかを判断する面談で、よほどのことがない限りすんなりパスして退院していくものだと聞かされました。措置入院で閉鎖病棟にやってくる人は一時的な狂乱状態のことが多いので、落ち着いてしまえば理性的な判断ができるようになって退院基準に沿った態度を取れるからです。

相模原の事件で措置入院の退院が早すぎるんじゃないかという議論が出てきています。確かに1週間や10日で措置解除の面談が行われるのは早いなぁと思います。しかし、措置入院というものが、こいつヤバいから落ち着くまで閉鎖病棟に閉じ込めておこうというニュアンスを変えない限りどーしようもないのかなと思います。

面談まえのAさんは入院前の大騒ぎがウソみたいに大人しくなっていて、看護師さんに対しても礼儀正しく振舞う良い子になっていました。

ところが、Aさんは退院できませんでした。

看護師さんがなんとも言えない表情で教えてくれましたが、自分の退院に関わる大事な面談でとる態度じゃなかったんだそうです。この時Aさんに「気分障害」という診断名がついたことを聞かされました。

気分障害って常に気分がすぐれないものかと思ってましたが、例えばこの状況なら嬉しいと感じるのが当たり前という場面で嬉しい以外の感情がわいてくる状態だそうです。

Aさんはこれで退院できる、面談の医師にいい印象を与えねば!と思う余り、脳みそが暴走して罵詈雑言を吐き散らしてしまったようでした。やれやれ。

それからしばらくしてもう1回措置入院解除の面談があったと思います。Aさんは措置は解除になりましたが、そのまま一般入院に切り替えられました。

【食事タイム】

食事は患者さん全員がホールに出てきてとってました。措置室に入っている人も一緒でした。ずーーーーっと措置室という人もいました。あそこに日々寝泊りしてるのかぁ…。

普段はみんな薬も飲んでるし落ち着いているのですが、時々食事タイムに顔を出さない人がいます、看護師さんに聞いてみると「ああ…昨日からあっち(措置室)に入ってるから…」

措置室に入っててもみんなと一緒に食事が出来る人もいるし、ガラスの向こうのフタのないトイレの横で食事しなくちゃいけない人がいるみたいです。

閉鎖病棟の個室は、症状が落ち着いてくれば開放されて自由にホールに出られるようになります。そのため、患者同士のケンカが勃発することもあり、看護師さんたちが多めに配置されて常に目を光らせている感じがしました。

【不思議な人たち】

Aさんが入院してしばらくしてから、10代の男の子が入ってきました。彼は私の顔を見ると真剣な面持ちでこう言いました。

「一緒に県庁に行きましょう!」

何しに行くの?と尋ねたところ

「世界を守るためです!」

自分は勇者だという彼は、しばらくすると今は大工だと言ってました。真実は統合失調症で引きこもってた19歳です。県庁に行ってどうやって世界を守るつもりだったんだろうかと今でも時々思います。

入院患者の中に以前カメラマンだったという30代くらいの男性がいました。少し話しかけてみたのですが、とても穏やかで物静かで知的な雰囲気のある人で、どうして閉鎖病棟にいるんだろうかと不思議に思うくらいでした。

その元カメラマン氏が私が話しかけた直後に行方不明になりました。

外に出るためのドアにはすべて鍵がかかっていて出られるわけがない。こんな場所無理だろと思うようなソファの下まで看護師さんたちがくまく探しましたが元カメラマン氏は忽然と消えてしまった。

その日、元カメラマン氏のお母さんが見舞いに来られてました。食事が始まりそうだったのでお帰りになったのですが、元カメラマン氏はお母さんについて外に出て、そのまま帰宅してしまったんだそうな。

連れて帰っちゃうお母さんもどうかと思いますが、お母さんがお帰りになるとき鍵を開ける看護師さんがいたはずだし、昼間のホールには常に2~3人の看護師さんの姿があったのに、閉鎖病棟から病院玄関まで結構距離があって、病院職員とたくさんすれ違ってるだろうに、よくそれをかいくぐって外に出られたもんだ。

こういう手品みたいなことが、時々起きるんだそうです。

閉鎖病棟に入っちゃうと、退院にたどり着くまでには開放病棟に移って様子見てそれから…です。退院までにけっこう時間がかかる。個人的には措置室をもうすこし人間味のあるものにしないと、トラウマになっちゃう人もいるんじゃないかと思うのですが。

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精神病院の閉鎖病棟は怖くて不思議な異空間https://i1.wp.com/yonimaji.net/wp-content/uploads/2015/11/seisnnbyouin.jpg?fit=500%2C359https://i1.wp.com/yonimaji.net/wp-content/uploads/2015/11/seisnnbyouin.jpg?resize=150%2C150アイーダ雑記精神病院,閉鎖病棟
精神科にかかっている人はたくさんいますが、入院が必要になる人は精神科を受診している人の中でも多数派ではないし、閉鎖病棟のお世話になる人は少なかろうと思います。ましてや措置入院で閉鎖病棟に直行となるとさらに少ないでしょう。 閉鎖病棟というと、鍵のついた檻があって始終わめき声が聞こえていてすっごい怖いところ、というイメージがあるかも知れません。そこはたしかにある意味怖くて、とっても不思議なところでした。 【追記】 相模原市の障がい者施設で起きた殺傷事件を受けて措置入院について少し追記しておきます。 スポンサードリンク 【Aさんと母親】 まず最初に言っておきますが、入院したのは私ではありません。 とある知人…Aさんとしておきましょう、かなり重いパニック障害があって家から出られない男性でしたが、私はひょんなことからこの人とこの人の母親と関わることになりました。この親子は顔を向かい合わせに癒着しているような共依存で、それがしんどいもんだから外部の私に親子そろって依存してきていました。 Aさんはパニック障害だけだったらまだ扱いよかったのですが、どうやら境界性人格障害もあったらしく、ささいなことでぶち切れて暴れ出したらもう手がつけられない困った人でした。ちょっとしたことでパニック発作を起こすのに、暴れてるときはなぜか発作を起こさないのでそれがすごい不思議でした。 今なら「勘弁してくださいっ!」とさっさと逃げ出せますが、当時は助けになるなら、みたいなくだらない使命感があったんですよ。無駄なことなのにね(苦笑) 【措置入院で閉鎖病棟にGO!】 ある時、「暴れていてどーにもならないから早く来て!」と母親から連絡があり、出向いてみるとAさんが包丁持って立ってました。母親は幸いケガなんかはなく、自室でため息ついてました。 私が家に来たことでほんの少し落ち着いたAさんはなんとか包丁をテーブルに置いてくれたのですが、何に怒り狂ってるのかよくわかんない。母親に聞いて見ると、数日前に起こした接触事故を思い出したら怒りが収まらなくなって、事故の相手のところに行ってカタをつけてやる!と暴れ出したとのこと。 で、母親から話を聞いている間にまた怒りがわいてきてわめき始めた。 まったく、間欠泉かっ!! 怒りのおさまらないAさんは「この家、燃やしたる!」と部屋の中に灯油をまきはじめ、手にしたライターは必死で奪取したけど家中のあちこちにライターが置かれている家だったのでとても奪取がおいつかず、私は外に出て警察を呼びました。 私服の警官が3人駆けつけてくれたとき、Aさんはあらゆるものが投げ散らかされ灯油の匂いが立ち込める中で、目を血走らせてタバコを吸っておりました。絨毯には黒い焼け焦げ跡。テーブルには包丁。灯油の匂いと同じくらい立ち込める犯罪未遂臭。 はい、措置入院。 措置入院とは、精神障害が原因で自傷他害のおそれが著しい場合に、本人の意思とは関係なく行政命令で入院させることです。Aさんは覆面パトに乗せられて精神病院に連れて行かれました。 【初めての閉鎖病棟】 入院ってことになってやれやれと思い私は帰ろうとしたのですが、一人では抱えきれない母親に懇願されて私も病院に行くことになりました。着替えなんか持って来てないから灯油かぶったままでですよ。そのときは非常事態だったから気がつかなかったけど、灯油の匂いを振りまいてる私たちも相当アブナイ人のようだったことでしょう。 閉鎖病棟ってものがどういう雰囲気なのか、それまで全然イメージがわかなかったのですが、病棟の入り口で「あ、これが閉鎖病棟かぁ」と思いました。 ガラス扉を開けるともう一つ鍵のかかった扉があって、開閉に必ず鍵が必要なのです。 入ると小さなホールみたいな作りでした。壁に沿ってソファがいくつかと喫煙コーナー。すべての病室はホールに面していて、ドアはパステルカラーに塗られています。夜だったせいか誰もいなくて、Aさんのわめき声だけがどこかから聞こえていました。 「今日は興奮が強いようですので、こちらの措置室に入ってもらいます」と看護師さんから説明があり、そこにどこかの部屋にいたAさんが連れてこられ、「措置室」と書かれた重たいドアが開けられると ちらりと見えたおお、これが措置室か。ここって保護室とも言うよな。 そのときAさんが私の腕をつかんで「お前も一緒に入ろ」と言ったのですが冗談ではありません。 その病院の措置室は、チマタで聞くような鉄格子ではなく強化ガラス張りでした。博物館の展示を連想しました。 薄暗い灯りの下、床に直接布団が敷かれていて、その横にはフタのないトイレがぽかーっと口を開けている。トイレのフタがないのは、無理やり外してガラスを割ろうとする猛者がいるからだとか。 同じようなつくり(であろう)部屋が「措置室」と書かれた重たいドアの向こうにいくつか並んでいて、「あー」とか「うおー」と、うなり声が聞こえていました。 いかに措置入院が必要な狂乱状態とはいえ、こんなところに入れられるのかと思ったらちょっと哀れな気がしました。Aさんの母親はあまりに可哀想だとさめざめと泣いてました。 入院させてやれやれと思ったのですが… 私はAさんと母親に懇願されて1日おきに見舞いに通うことになってしまいました。あんなに頻繁に閉鎖病棟を訪ねることになろうとは… スポンサードリンク 【個室は明るいけど…】 翌日、Aさんは個室に移されました。ドアは内からは開けられず、鉄格子。天井に監視カメラが設置されています。パステルカラーのドアには前住者たちが力任せにつけたであろう蹴った跡がたーくさん。ベッドのある部屋に入れたのは、興奮状態で暴れはするけど自傷自殺の恐れがないからみたい。 内科や外科であれば入院着やパジャマ着用なんでしょうが、ここではみんな私服です。ただ、携帯は没収、タバコは本数を決められ病室では吸えず、看護師さんに許可をもらって喫煙コーナーに出なくちゃならない。トイレもついてないから、これまた看護師さんを呼ばなきゃいけない。窮屈な環境です。 彼氏や彼女が閉鎖病棟の個室に入ってて時々見舞ってますという方、病室でいちゃいちゃしてると見られてるかも知れませんよ(笑) 個室に移って気がつきましたが、閉鎖病棟の看護師さんは若くて屈強なメンズが多かったです。 Aさんが入った閉鎖病棟は男女で棟が違いましたし、この病棟には高齢者が少なかったので、誰かが暴れ出したらがーっと押さえ込める力持ちが揃ってる感じでした。 【措置入院から一般入院へ】 -追記- Aさんが覆面パトに乗せられて閉鎖病棟につれてこられて1週間くらい経った頃でしょうか、看護師さんから「明日は大事な面談がある」と言われました。措置入院を解くかどうかの面談です。 2名以上の医師が立ち会って退院させてもいいかどうかを判断する面談で、よほどのことがない限りすんなりパスして退院していくものだと聞かされました。措置入院で閉鎖病棟にやってくる人は一時的な狂乱状態のことが多いので、落ち着いてしまえば理性的な判断ができるようになって退院基準に沿った態度を取れるからです。 相模原の事件で措置入院の退院が早すぎるんじゃないかという議論が出てきています。確かに1週間や10日で措置解除の面談が行われるのは早いなぁと思います。しかし、措置入院というものが、こいつヤバいから落ち着くまで閉鎖病棟に閉じ込めておこうというニュアンスを変えない限りどーしようもないのかなと思います。 面談まえのAさんは入院前の大騒ぎがウソみたいに大人しくなっていて、看護師さんに対しても礼儀正しく振舞う良い子になっていました。 ところが、Aさんは退院できませんでした。 看護師さんがなんとも言えない表情で教えてくれましたが、自分の退院に関わる大事な面談でとる態度じゃなかったんだそうです。この時Aさんに「気分障害」という診断名がついたことを聞かされました。 気分障害って常に気分がすぐれないものかと思ってましたが、例えばこの状況なら嬉しいと感じるのが当たり前という場面で嬉しい以外の感情がわいてくる状態だそうです。 Aさんはこれで退院できる、面談の医師にいい印象を与えねば!と思う余り、脳みそが暴走して罵詈雑言を吐き散らしてしまったようでした。やれやれ。 それからしばらくしてもう1回措置入院解除の面談があったと思います。Aさんは措置は解除になりましたが、そのまま一般入院に切り替えられました。 【食事タイム】 食事は患者さん全員がホールに出てきてとってました。措置室に入っている人も一緒でした。ずーーーーっと措置室という人もいました。あそこに日々寝泊りしてるのかぁ…。 普段はみんな薬も飲んでるし落ち着いているのですが、時々食事タイムに顔を出さない人がいます、看護師さんに聞いてみると「ああ…昨日からあっち(措置室)に入ってるから…」 措置室に入っててもみんなと一緒に食事が出来る人もいるし、ガラスの向こうのフタのないトイレの横で食事しなくちゃいけない人がいるみたいです。 閉鎖病棟の個室は、症状が落ち着いてくれば開放されて自由にホールに出られるようになります。そのため、患者同士のケンカが勃発することもあり、看護師さんたちが多めに配置されて常に目を光らせている感じがしました。 【不思議な人たち】 Aさんが入院してしばらくしてから、10代の男の子が入ってきました。彼は私の顔を見ると真剣な面持ちでこう言いました。 「一緒に県庁に行きましょう!」 何しに行くの?と尋ねたところ 「世界を守るためです!」 自分は勇者だという彼は、しばらくすると今は大工だと言ってました。真実は統合失調症で引きこもってた19歳です。県庁に行ってどうやって世界を守るつもりだったんだろうかと今でも時々思います。 入院患者の中に以前カメラマンだったという30代くらいの男性がいました。少し話しかけてみたのですが、とても穏やかで物静かで知的な雰囲気のある人で、どうして閉鎖病棟にいるんだろうかと不思議に思うくらいでした。 その元カメラマン氏が私が話しかけた直後に行方不明になりました。 外に出るためのドアにはすべて鍵がかかっていて出られるわけがない。こんな場所無理だろと思うようなソファの下まで看護師さんたちがくまく探しましたが元カメラマン氏は忽然と消えてしまった。 その日、元カメラマン氏のお母さんが見舞いに来られてました。食事が始まりそうだったのでお帰りになったのですが、元カメラマン氏はお母さんについて外に出て、そのまま帰宅してしまったんだそうな。 連れて帰っちゃうお母さんもどうかと思いますが、お母さんがお帰りになるとき鍵を開ける看護師さんがいたはずだし、昼間のホールには常に2~3人の看護師さんの姿があったのに、閉鎖病棟から病院玄関まで結構距離があって、病院職員とたくさんすれ違ってるだろうに、よくそれをかいくぐって外に出られたもんだ。 こういう手品みたいなことが、時々起きるんだそうです。 閉鎖病棟に入っちゃうと、退院にたどり着くまでには開放病棟に移って様子見てそれから…です。退院までにけっこう時間がかかる。個人的には措置室をもうすこし人間味のあるものにしないと、トラウマになっちゃう人もいるんじゃないかと思うのですが。 スポンサードリンク